さて、僕が描く漫画には自分のために描く漫画と人のために描く漫画があります。
これは金のために描くとか自分に不利益であっても世間に真実を伝えるために描くということではなく、
単に自分だけで読むために描くか、人が読むことを考えて描くかということです。
自分のために描く漫画というのは本当に楽なんですよね。なにせ分かりやすくとか見やすくといった
要素が一切不要なわけですから。説明がどんなに足りなくても100%理解されることが保証されていて、
描きたくない物は描かなければいいし、描きたい物は展開を無視していきなり描いてしまってもいい。
10Pにわたってだらだら説明文が続こうと問題なし。自分がそれで満足なら全くルール無用ですから。

ところが人のための漫画となると、そんなことやったら論外です。まず読者は何の前提知識も無いわけですから
理解させなければいけない。しかし説明をだらだら入れると退屈だから読み飛ばされる。
いかに効果的に世界観を理解させて物語の世界に入り込ませるかを考えなくてはいけないんですね。
なんてハイレベルなんでしょう。長編ならともかく読みきりだときついですよね。
そして難しいのがコマ割り。同じストーリーでもコマ割一つでおもしろさは全然違います。
展開が変わるときはページを替える、見せ場は大ゴマを使い、単調な配置を避けるなど。基本はこんなものですが
やるとなると難しい。
話が思いついて(おもしろいかどうかは別として)絵が描ければ(上手いかどうかは別として)漫画が
描けるだろうと思っていたのですが、それだけじゃだめなんですよね。
話を思いついたらネームを1回描きます。楽しいのってここまでなんですよね。ネームを一回描いたらネームを練り直して
何回も何回も書き直します。何を練り直すかというと重にはコマ割ですね。後ストーリーのペース配分。
Hシーンをもっと増やしたいけどこのシーンは削れない。ここのコマは次のページの頭に持ってきたいけど
それにはもう少し話を増やすかうんと削るかしないといけない。などなど。僕はいつもだんだん訳が分からなくなって
投げてしまうか、適当なところで妥協します。
ネームを描いたら下書きです。これは楽しいですね。人物までは。背景を描くというのは実に大変で面倒でつまらない作業です。
いかに描かずに済ませられるかばかり考えてしまいます。
さて、下書きを書いたらデッサンの狂いをなおします。これがまたつらい作業なんですよね。ああ、俺って下手だなあと
再確認するわけですから。いつまでたっても直らないともういいやと投げます。
投げた後はペン入れです。ペン入れというのは修正があまりできないので、慎重になって精神を消耗します。
で、ホワイトで修正します。これも直りきらないのであきらめますが。後は消しゴムをかけてスクリーントーンを張って
できあがりです。できあがった作品を読み返すのはいいですね。どんな出来であれ、やり遂げたという充実感がありますし、
自分の作品は自分ではおもしろいと思っていますから、読んでまたおもしろいわけです。
というわけで、
話を考える とても楽しい
ネームを書く 楽しい
ネームを練り直す むちゃくちゃつらい
下書き(人物) とても楽しい
下書き(背景) つらい
ペン入れ つらい
仕上げ つらい
読み返す とても楽しい
という行程を経るので、ネームを書いたところで止まってしまう作品がごろごろするわけです。
自分のための漫画だと以下の行程です。
話を考えながら鉛筆で描く とても楽しい
読み返す 楽しい
これだけ。ああ、なんて楽なんでしょ。まあできあがった作品はかなり質が低いのですが、
人に見せないと思うと恥も外聞もないのでストーリー自体はもっとおもしろかったりして。
まあ、言い訳です。こんなこと言ってる奴はプロにはなれないでしょうね。

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