エピローグ.

……


灼死によって獅子咬を失った俺はすっかり攻撃力を落としてしまったが、
時波を全滅させる働きをした俺の評価は長老会ではすっかり高まり、
ライバルがいなくなったことで紫焔の夫は確定してしまった。
「よう、おめでとさん」
「春雅さん。警察のお仕事はいいんですか」
「今日は日曜だ。非番だよ非番」
「ふん、気楽なものだな公務員は」
「臣さん」
築紫大教授の臣も来ている。
「どうしたんですか」
「なんだ、おまえの当主就任祝いだからってんで来たんだぞ。まあ本当の当主祝いには
これるかどうか知らないからな」
玖能で五指にはいるこの二人、玖能を名乗りながらよそで仕事を持っているこの男共、
奇人扱いだが極めて強い。
「まだ当主というわけでは…」
「ま、功績を考えれば当然だろう。何にせよ、宿敵時波を一網打尽にしたんだからな」
「時波の連中も頭が悪い。何も玖能にこれだけの人間がいるときに対決しなくても
よかろう物だが」
「まあ紫焔がいますからね」
「おまえの話だよ、日沖。おまえこそが最強の怪物だ」
「……は?」
最高の殺し手、といわれているが、最強といわれたのは初めてだ。
「強さだったら、紫焔の足元にも及びませんよ。お二人には言うに及ばず。
俺は少しでもミスすれば即死ですよ」
「でも生きているだろう。そう言う奴が強いんだ」
「はあ、そんなもんでしょうかね」
「ま、おまえはよくやったよ。しばらくは休めばいい。これからもそれなりに
修羅場が待ってるだろうから休めるかどうかは知らないがな。色男」
「か、勘弁してください」
「………ふむ、まあ、祝いを述べておこうか」
「は、はい。ありがとうございます」
「おまえが当主になるならば玖能も安泰だろう。とりあえず私の研究の邪魔だけは
してくれるなよ」
「解ってますよ。紫焔が許可してるんですから、俺が否定するいわれはないですよ」
「ならば結構。ではさらばだ。後の知らせは不要だ。私も忙しいのでね」
「暇なときはたまに顔を出して下さい」
「ああ」
二人は飄々と帰っていった。
「お兄さま、どこに行ってらしたんですか?」
「いや、ちょっと周囲を見てたんだよ」
「もう。それより私の花嫁衣装を選んでくださいな」
「……紫焔、よかったのか?本当に俺なんかと結婚させられて。まだやめることだって
できるぞ」
「そんな……私は……ずっと……お兄さまのお嫁さんになるのが夢だったのに…
お兄さまは、本当はいやなんですか?」
「い、いや…」
「いやなんですか!?」
「そ、そうじゃないよ」
「でも、でも…」
「おまえは、ずっとかわいい妹だったから…まあ、その、いや、これからは、
努力する」
「ふふ…うれしい…」
花のように笑う紫焔。思えばこの子はずっと俺の前でだけこんな愛らしい笑顔をみせて
くれていた。本当は他の誰にも渡したくなかった。でもそれは子供の独占欲のような
気がして…。
これからは俺ももう少しわがままになっても良い、そう言うこと何だろうな、きっと。

紫焔END