7.

まずい……誰かが来る。
意外にも、それを気にしたのは奴のほうだった。
突然目の前から消え……そこに飛びかかった。
俺はあわてて後を追った。
奴が戸の影に消えて約一秒後にそこをのぞき込む。
そこで目に入った物は、血を吹き出しながら倒れていく、
零未と紫乃と輪音の姿だった。
「……邪魔だよ」
そして、輪音の首から勢いよく吹き出す返り血を浴びながらも
春日はつまらなそうにそう言うだけだった。
「あ…ああああ…!!!」
俺は一気に逆上して、飛びかかった。
奴がつまらなそうに、それでもすばらしい早さでナイフを繰り出す。
それは過つことなく肋骨の間をくぐり抜け、心臓を貫いた。
それと同時に、俺の刀も奴の心臓を貫いていた。
……


玖能の葬式はいつもあっさりしている。
遺影を飾ることもない。そもそも葬式自体が珍しい。
戦いで朽ち果てた遺体などそこで処分されるのが常だからだ。
零未と輪音は生前の面影もない白い骨になった。
あの日、俺がもう0.5秒遅くのぞき込んでいたら、もう一人も
死体になっていて、この俺が命を取り留めることもなかっただろう。
「紫乃……」
「……」
あの日、俺を救うために、自身の瀕死の重体を押してくれた紫乃は、
半身に麻痺が残り、車いすの生活を余儀なくされた。
俺もまだ、四肢に重大な麻痺が残り、日常生活に支障がでるほどだ。
「どうして、俺を助けたんだ…?あのとき、すぐに、自分の身を守れば
……こんなことにはならなかったんじゃないのか?」
「……あなたが好きだから」
紫乃はそんなことを言う。
「……うん」
不虞になった俺たちは、もうお互い以外に身を寄せる物は何もない。
それでも俺たちは生きている。
いまはただ……死者のために涙を流すこと。
それ以外に、生き残った者にできることなど何もないのだから。

紫乃END